俺は、この後に聞く柚香の言葉を信じる事が出来なかった。



「だって・・・寮の隼斗の部屋に盗聴器仕掛けたから♪」



はっ・・・?

盗聴器だと!?

「嘘だろ?」
「ホントだよ~」

柚香はのんびりした声で言った。

「いつだよ」
「この前、神宮護くんが隼斗の部屋に遊びに行ったでしょ?」
「あぁ」

神宮護と言うのは、俺らとタメで俳優。

結構仲が良かったりもする。

「神宮くん、私の大ファンでね。協力してもらったんだぁ」

はぁっ!?

「おまけに隼斗と仲いいし?超使いやすかったよ~」

・・・ざけんなよ。

俺の友達を利用すんな。

「あっ、それで今日の隼斗の行き先が分かったから来ちゃったんだ~」
「要件を言え」

俺はだんだん、自分の苛立ちを抑えきれなくなってきた。

「分かってるでしょ?」
「何を?」
「私の要件」

低い声でそう言うと、柚香はポケットからあるモノを取り出した。

「はっ・・・!?」

それは・・・カッターナイフだった。



「分かってるでしょ?・・・桜井満奈を殺しに来たの」



―――――チチチチチ・・・

カッターの刃を少しずつ、少しずつ出していく。

ニヤリとまるで山姥の様に笑った柚香は、正気ではなかった。

「早く・・・桜井満奈を出してよ。アイツが憎い・・・」
「そんな事して、誰のためになるって言うんだ!?」
「私と隼斗の・・・明るい未来のためよぉっ!」

そして、土足のまま俺ん家に上がった奴。

「靴を脱げ」

俺がそう言っても。

「桜井満奈はどこにいるのかしらぁ~」

正気を失った瞳。

「おいっ!」

俺の声など聞こえない、と言っているようだった。

満奈が・・・危ないっ!