10月3日―――――。

「じゃあ、行ってくるね」
「おう。終わったら1回実家に行け。俺が迎えに行くから」

満奈は今日も映画の撮影がある。

・・・海老名春輝とはもう大丈夫そうだし。

「分かった」

どこか不安げな満奈の表情。

そんな満奈に、優しくキスをした。

「行ってきます」
「あぁ」

―――――バタン

ドアが閉まり、満奈の姿が完全に見えなくなる。

・・・今離れたばっかなのに、もう会いたい。

今日は、なおさら・・・。

そんな時。

―――――♪~♪~

ケータイが鳴った。

まさか・・・っ!

そこに映し出された文字は“椎名柚香”。

またか・・・。

ただ、今日はいつもと違った。

いつもならメールなのだが。

・・・今日は、電話だった。

「・・・はい」
『あっ、隼斗ぉ?柚香だけど』
「何の用だよ?」

間延びした言い方にイライラを隠せない。

『そんな言い方しないでよ~。ひっどぉい』
「要件を言え」

“そんな言い方”をさせてる原因はお前だっつーの。

しかしコイツ・・・余裕だな。

柚香の声には、とても今日人殺しをするような声には聞こえなかった。

・・・まぁ、当然だろうが。

と、思っていたが。



『今日、行くからね?楽しみにしてて』



急に低くなった奴の声。

背筋がゾクッとした。

「誰が楽しみにするか」

あんまりイライラしたもんだから、思わずブチッと切った。

『隼斗ん家に逃げる事だって・・・知ってるんだから』

柚香がそう言っていた事も知らずに。