その時だった。
「・・・えっ?」
俺の手元からケータイが・・・消えた。
と思ったら。
「隼斗の気持ちも考えてよ」
今まで聞いた事がないくらい、満奈の低い声が聞こえた。
『なっ・・・。桜井満奈!?』
「はい。桜井満奈です」
この会話を聞いて唖然とした。
俺のケータイは・・・満奈の手にあった。
『何で隼斗と一緒にいるのよっ!』
「寮のルームメイトだから」
満奈の額・・・怒りマークが浮かんでる。
俺は黙って成り行きを見守ることにした。
『信じられない・・・。あんたなんか私よりブスの癖にっ!』
「うん。あたしはブスだよ。でもさ、愛しあってる2人の間には顔のよさとか関係ないと思う」
『そっ、そんなの綺麗事よ!』
柚香の馬鹿デカい声がよく聞こえる。
綺麗事?
意味分かんねぇ。
ってか、俺もそう思う。
「愛して愛される。それだけで十分なんだよ」
『・・・隼斗を返してよ』
「それは出来ない」
『どうしてよっ!?』
満奈・・・ホントにごめんな。
心の中で謝った。
俺は満奈を強く抱き締めた。
『隼斗のファーストキスの相手も、初めての相手も私なのよ?』
「だから何?」
『悔しいでしょ?隼斗の事、嫌いになるでしょ?』
柚香のその言葉を聞いて、ドキッとした。
やっぱり・・・嫌か?
嫌だよな。
自分以外の女を抱いたなんてさ・・・。
満奈・・・。
何て答えるんだ?
「嫌いになるわけないじゃない」
力強く、満奈はその言葉を言い放った。
「過去は誰にでもあるモノよ。汚くても、醜くても」
この台詞が、やけに胸に響いた。