「隼斗?」

メールを打つ手を止め、俺を見つめた満奈。

「満奈、ちょっと静かにしてろ」
「えっ?」
「柚香からだ」

着信の相手を聞き、満奈はびっくりしたようになった。

でもすぐに、俺から少し離れた所にちょこんと座った。

それを確認してから、俺は思い切ってボタンを押した。

「はい」
『隼斗っ!あのニュースは何なの!?』
「何って、あのままだけど?」

いきなりヒステリックな声を上げた柚香。

『彼女って・・・桜井満奈だったの?』
「・・・あぁ」
『信じられないっ!』

そう言って、柚香は泣きだした。

コイツは今、マスコミに追われてるんだろうな。

自分だけ言ってる事が違ったから。

『ねぇ、隼斗のファーストキスも初めても、貰ったのは私だよ!?』
「・・・っ・・・」

んな事言うなよ!

絶対満奈に聞こえてるし!

そう思って満奈を見てみると、案の定満奈は悲しそうな顔をしてた。

ごめんな・・・。

そっと満奈に近づき、優しく頭を撫でた。

「・・・!」

肩をビクッと震わせた満奈は、不安そうに俺を見る。

“大丈夫だ”

口パクでそう言うと、満奈は大きく頷いた。

「でも、そんなの関係なくね?」
『あるもんっ!私のファーストキスも初めてをあげたのも隼斗だよ。だから・・・隼斗はずっと私の隣にいてくれると信じてた。・・・ううん、信じてる』

めっ、面倒くせぇ・・・。

第一、付き合ってたわけじゃねぇし。

一瞬だけの快楽を求めた、みたいな?

でも・・・。

俺の過去が原因の一つだな。

柚香と何にもなければ、こんな面倒な事にはならなかったのか?

『私の方が、隼斗の事を何倍も愛してる』

満奈を傷つけなくて済んだ?

『隼斗・・・私の元に来てよ』