しゃがんで視線を合わせる。
「あのね・・・、トイレに行きたくて、そしたらお母さんとはぐれちゃった・・・」
「そっか。名前は?」
「大和杏樹って言うの。小学校1年生なの!」
杏樹ちゃん・・・。
可愛い~。
小1って超可愛いね!
「杏樹ちゃん、今日はお母さんと来たの?」
「うん!杏ね、満奈ちゃん好きなの!お母さんはちぃちゃん好き~」
「ホント!?ありがとう杏樹ちゃん」
「杏って呼んで。みんなそう呼ぶの」
ニコッと笑った杏ちゃんに癒される~。
その時。
「満奈?そろそろ・・・って、その子は?」
麻衣ちゃんが不思議そうな顔をしてやって来た。
「迷子みたいです。お母さんとはぐれたそうで・・・」
「分かったわ。私が探しとく。早くしないと遅れるわよ?」
「分かった!ありがと、麻衣ちゃん」
そしてあたしは杏ちゃんを見た。
腕につけてたたくさんのブレスレットの1つを外す。
「これ、杏ちゃんにあげる。誰にも内緒だよ?」
「うん。満奈ちゃんありがとう♪」
「じゃあライブ楽しんでってね!」
あたしは杏ちゃんとバイバイして、走りだした。
杏ちゃんのために。
みんなのために。
絶対絶対、いいライブにする!
そう心に誓って、あたしは走り続けた。
楽しくて。
笑顔がいっぱいで。
キラキラで。
―――――でも、悲し過ぎて。
そんなステージはもうすぐ、開幕。