「はい!いくよ~。重要なシーンだからよろしくね!」
「はぁい」
「分かりました」
結局、気づいたらもうこのシーンの撮影・・・。
目の前には満奈がいる。
さすがにここでは言えねぇし・・・。
こんな気持ちのままじゃ、告白とキスなんて・・・。
出来ないような気がする。
まぁ、姉貴がいないのが不幸中の幸いだった。
「5・4・3・・・、スタート!」
カチッって音がした。
『舜くんさ・・・、小桜さんと付き合ってたの?』
『はっ?・・・違うし。だって俺、他に好きな奴がいるから』
『えっ・・・』
台詞と共に俺を見つめる満奈。
・・・じゃなくて、美織。
切なそうな瞳を見て、つい抱きしめたくなる衝動に駆られる。
俺は台詞を言い続けた。
・・・舜はかっけぇなぁ・・・。
好きな奴に真っ直ぐと思いを伝えられるんだから。
『誰なの?その・・・、好きな人』
満奈だよ。
俺の・・・、流川隼斗の好きな人は桜井満奈だよ。
『・・・お前だよ』
美織が大きく目を見開いた。
シーンと静まってる現場。
ひとつ深呼吸をした。
『俺が好きなのは結城美織です』
俺が好きなのは桜井満奈です。