生ビールで乾杯した後、和則は言った。


「なぁ幸成…
ごめん。俺お前に嘘ついた。」


夕方、和則に話しがあると言われ


行きつけの居酒屋に来ていた。


普段は少ない客も

忘年会シーズンで賑わっている。


そんな中、珍しく深刻な顔をしていた。




「どした?そんな顔して。」


俯いてなにも言わない和則に

苛立ちを感じながらも

話しだすのを待った。




「…今日さ。
前田の話聞かないって
俺言ったじゃん?
あれさ…嘘だったんだ。」

「どーゆー事?」


相変わらず俯いて

和則は続けた。


「実は…、一週間前に
高橋と久しぶりに会ったんだ。
その時に聞いたんだけど…」

和則はいきなりこっちを向いて

俺に言った。


「なぁ!!幸成は本当に前田の事
諦めたのかっ?
本当はまだ気持ち残ってんだろ?
今日も朝ぼーっとしてたけど
前田の事考えてたんだろ?
お前から話してくれるの
待とうと思ったけどさ
やっぱ俺黙ってらんねーよ!!」


和則のあまりの剣幕に

俺は一瞬たじろいだ。


気持ちが残ってる…

和則にそう言われて

なんだか心のつっかえがとれて

押し込めていた気持ちがどんどん溢れるのが分かった。