思い出にひたってるうちに

大学についた。


「幸成、おはよ。
今日から新しい部員が入るらしいよ。

って!!幸成ー。聞いてんの?」


「あーおはよ。
ぼーっとしてたわ。」


前田の事を考えてる時

俺は話し掛けても気付かないらしい。


「いつも冷静な幸成が
話し掛けても気付かないなんて
一体なんの事考えてんのー?
もしかして前田の事
まだ引きずってるとか?」


そう和則に言われた。

中学の時、俺も和則も

地元のサッカーチームのユース

っていう中学生のプロみたいな所で一緒だった。


腐れ縁?いや…親友。


だから俺が中学から前田の事が


好きだったのを知ってる。

でも違う。

引きずってなんかない。


「前田って懐かしいな。
元気してんの?」


懐かしくなんかないけど。

本当は毎日のように思い出すけど。

諦めたんだから…


「どうなんだろーな?
地元の奴からいろんな話きくけど
前田の話だけは聞かないなー。

…子育て頑張ってんじゃん?」


「そっか。
まぁあいつの事だから、頑張ってんだろーな。」


「だといいな…。」



俺は和則と一緒に

サッカーで有名な、

地元から少し離れた大学に行く事に決めた。

大学に上がると同時に、

前田の事も考えないようにした。

諦めた。

サッカーだけに打ち込む事にした。


あいつは高校3年生の夏に、

…妊娠した。

それからすぐ中退して、結婚した。


別に高校で妊娠して中退するのは

めずらしい事じゃない。

実際何人かいたし。

結婚したからといってしばらくは諦めきれなかった。

6年間の気持ちをもう一度会って、伝えるだけ伝えようと思った。


でも、卒業式の日

前田はまだ小さな小さな子供をつれて来た。

友達に囲まれて

幸せそうに笑う顔を見たら

6年の片思いなんて

どーでもよく思えた。


諦めたんだ…

たまに、あいつが欲しくて欲しくて

堪らない気持ちになるけど。

気付かないふりをするんだ…