今回の作戦において重要な役割でもある、源泉にドライアイスを叩き込むのは、林の「漆黒」となった。主力が宝王子の「疾風」と新川の「雷迅」であることは、とうに知られているはずだからだ。
「疾風」が真正面から、「雷迅」が背面から斜面を駆け登っていく。間を埋める小隊は「風神」の役処だ。「風神」は「疾風」および「雷迅」にも部隊を派遣する。作戦実行後、境目をいち早く発見するためだ。
帝と聖徳率いる本隊は前方待機。何かが起これば即座に対応できるよう、器用な人物を結集させておく。
ドイツは強国だ。アメリカや中国と同等と考えてもいい。日本は、その両国ともに敗れている。今回もまた、勝率は低い。
それでも進軍したのには相応の訳がある。
日本は軍が成立して間がない。そのため、精度も当然劣っている。
帝の狙いは、己の非力さを皆に身体をもって知らせること。そして、他国がいかに強いかを見ること。
鍛練の推奨と情報収集を兼ね備えた、ある意味非情な作戦だ。
しかし、帝は強行した。文官の反論は、聖徳が押さえ込んだ。そして、それに異論を唱える将軍などいはしなかった。
将という飾り名を授かっている者たちは、誰よりもその事実を痛感していたからだ。願ってもない機会だった。
彼らは敗戦覚悟で挑む――