執務室は本館のさらに中央に位置している。守りやすく攻めにくい、そんな場所だ。
 帝の私邸よりも強固なのは、ほとんど帝は私邸にいないからだ。日々の大半を仮眠室で過ごしたりするため、余程のことがなければ聖徳と執務室に篭ったりしている。
 暗証番号を入力した宝王子は、開いた扉を潜る。
「…失礼します、宝王子です」
「宝王子、どうした」
 帝はいつものように中央にある執務机で作業をしていた。パソコンをいじっていたのは聖徳だ。
「ちょっといいスかね、聞きたいことが…」
「ああ。何だ?」
「暗天星華のことなんですが」
 そう切り出すと、帝は予想していたのかゆったりと笑んだ。ようやく来たか、と言わんばかりに。
「暗天星華は決意に反応する。初めは力を引き出し、実体化させることができればかなりの腕だな」
「実体化?」
「暗天星華には生きた人格が眠っている」
 衝撃的な事実だった。石に、まるでファンタジーでよくある精霊のような存在があると言うのだから。
「重要なのはイメージ。どんな技を繰り出し、どんな風に能力を使うのかを想像することだ」








 冬をまるごと鍛練に注ぎ込んだことで、宝王子は暗天星華の力を自分のものにすることができた。
 紅玉の能力は炎。攻撃に適した属性だった。
 久々に会った他のメンバーも使えるようになったと聞いたときは悔しくも思ったが、嬉しさのほうが優っていた。つまり、日本はまた強くなったということだからだ。
 そして春、北朝鮮を撃つために動いていたが、もうひとつ、世界を大きく揺るがす事態が起きる。