アダリーは、二人の話で、すでに敵の目星をつけていた。
「俺は、北朝鮮か韓国だと思うが?」
「…私もそう思えてきました」
「…だね」
 北朝鮮は戦前からアメリカに対してライバル心剥きだしにし、中国を疎ましく思い、日本を憎んでいる。
 一方韓国は、どっちつかずを続けている信用し難い国家だ。
 どちらでも、有り得ない話ではない。
「確率が高いのは…北朝鮮だな。英語、日本語、中国語が話せる者を派遣したんだろう?拉致を得意とする奴らの独壇場だな」
「となれば…危ういのは我々か」
「近場から狙うよね、普通はさ」
 アメリカは遠い。
しかも、半端なく強い国だ。
 それならば先に近い日本や中国を狙うことは、容易に分かる。
 そうと分かれば、急がなくてはならない。
「お…俺、帰ってもいいかなぁ?」
「私も……」
 伺うようにアダリーを見る。
ここはアダリーの国だ、彼が叫ぶだけで衛兵が集まる。
許可なしで祖国の地が踏めるとは思えない。
 しかし、アダリーは淡々としていた。
「好きにしろ」
 裏を疑ってしまうほどあっさり返され、二人はぽかんとしてしまう。
それでもアダリーは気にせず立ち上がる。
「どうした、帰らんのか」
「あ、いや…帰るよ」
 アダリー皇子殿下って読み難い、とは二人同時に思ったことだ。
皇子殿下が分かりやすいほうが珍しいのだが。
 気が変わる前にと急いで帰国するのだった。