三部屋は隣接しているであろうスイートルームは、装飾も家具も見苦しくない程度の配置になっている。
配色も落ち着いた雰囲気をしている。
成金では逆に不安になりそうな、本格派。
 淡いブルーのカーテンが揺らめき、その隙間からは荘厳なコロンビア城が垣間見える。
家具は全て木彫。
床も天井も白で、絨毯の真紅が目に鮮やかだ。
 そんな一室の中央にあるクリーム色のソファーは、とても柔らかく座り心地もよかった。
「…さて、理由を聞かせてもらおうか」
「あー…そういや、そんな話してたっけ……」
 逃げればよかった、と宝王子はぼやく。
アメリカに圧倒されて、すっかり忘れていた。
逃げる機会を失った今からすれば、ここは密室だ。
話さない、という選択肢はない。
「実は、変な書状が見つかってね」
 日本で発見されたそれには、日本軍の規模や現在蓄えられている兵糧などが事細かに記載されていた。
密偵である。
何者かが放った密偵が、日本を調べていたのだ。
 それを知った帝は、アメリカの仕業ではないかと考えた。
だから宝王子を派遣したのだ。
 しかし。
「日本も、ですか?実は中国でも同じものが」
「中国も…かい?」
 驚きを隠せない二人の前でアダリーは意味深に呟き、頷く。
「そうか……そういうことか」
「何か分かったのか?」
 飛雲がアダリーを見ると、宝王子もまたつられるようにして顔を向ける。
アダリーは我意を得たりと言わんばかりに口元に手を当て、思案していた。
「アメリカにも、同じ奴らがいた。すぐさまセキュリティシステムが感知して取り押さえたが」
「え…!?」
「あ、アメリカも!?」
「ああ」
 アメリカと言えば、世界一のセキュリティシステムを有している。
虫一匹中に入れないとされるコロンビア城は、コロンビア特別区のど真ん中にありながら侵入者を許したことがない堅牢だ。
無論、今回もまた例外ではなかった。