「帝、それは?」
 宝王子が不思議そうに見るのを横目にしつつ、聖徳が机の上に置いたそれを、帝はゆっくりと開けた。
「飴…いや、ビー玉か?」 新川が目を子供のようにキラキラと輝かせながら、好奇心満開の表情を帝に向ける。
 帝はそれを全身で受けつつ、その中から赤い玉を取り出す。
淡いランプの光を受けて、それはテラリと輝く。
大きさは通常のビー玉よりやや小ぶりだ。
まるで幼子の宝箱のように、色とりどりの玉が収められていた。
「これは、宝王子に」
「えっ?あ、有難う御座います…?」
 宝王子はいきなり手渡されたそれに、ワタワタしながらも大事そうに両手に乗せる。
 それを尻目に、帝は次々と桐箱から玉を取り出し、渡していく。
新川には黄色、大山には緑色、林には青色、山代には黒色を。
「帝、これは…?」
「『暗天星華』という」
「帝のご実家の、家宝だとされている代物だ。…新川っ!手荒に扱うな!!」
「へぁ!?」
「か、家宝…」
 帝の一族と言えば、代々神官を送り出してきた名家。
しかも最近は軍の帝をしている一家だ。
その財力は考えられないほどのものである。
 その家宝と聞いて、まじまじと観察していた新川の身体がビクーンッと跳びはねた。
「これはお前たちの力になるやもしれぬ。だが、ただの石ころにするも、またお前たち次第」
 帝は静かに言う。
その言葉は、彼らの心に安らかな波をたてた。
「己を信じて戦え。『暗天星華』はそれに応えるだろう」
 全ては想い一つで。
それがあれば人は戦える。
強くなれる。
 宝王子は大事なことを知った気がした。