迫り来る敵を次々と鮮血に染め上げ、眼前を埋め尽くす北朝鮮兵を圧倒的な武力で倒していく。
その背後には軽い短剣で応戦する軍師の姿があった。
「このまま敵本陣へと突っ込む!着いて来い!!」
「はっ!!」
 帝の短い言葉のあと、大軍隊が北上を始める。
その先には、今戦の敵本拠地となっている古城があった。
 古城を包囲するような形で陣を敷く。
突入部隊が先に中へ入り、そのあと将が行く手筈となっている。
しかし。
「…宝王子と新川はどうした」
 古城に突入するはずの将がいない。
いるのは途中参戦した大山のみだ。
 林と山代は本陣待機だからいいとしても、特攻が得意の二人がいないのは不自然だった。
「それが…」
 思わず泉は言葉に詰まる。
帝のことだ、有りのままを話せば罰は免れない。
 そんな彼の様子で、聡い帝は何があったか悟ったらしい。
瞳に鋭利な光を浮かべる。
「…そうか」
 帝はそれだけを漏らすと、何も言わず古城へと視線を戻す。
その沈黙がまた恐怖心を煽ることを、知りながら。
「……時間だ」
 帝と兵が古城に向けて馬を進め始めた、そのとき。
「お、お待たせ…しましたぁ!!」
 大声が響いた。
少しばかり丘になっているその頂点に、馬が二頭並んでいる。
宝王子と新川が間に合ったのだ。
「遅い」
「す、すんません…」
 冷や汗を流す二人に気が済んだのか興ざめしたのか、フイッと視線を二人から城に戻す。
「いつまでもここに滞在したくはない。さっさと片して来い」
 いまのはお許しが出た、と二人は判断した。
「はい!!」
「任しとけ☆」
二人は意気揚々と馬を駆け、自軍を率いて突入していった。