心、此処に非ず 最後の最後 棺が開けられて、家族や友人が音輝に覆い被さって泣いている。 死に顔とは思えないくらい、音輝の顔は血色が良くて… いつだったか二人で出掛けた時に、俺が運転する車の助手席で眠っていた…あの顔と、まるで同じだった。 『林 雄二さん…ですね』 泣き崩れる人たちを、茫然自失と眺めていた俺を、誰かが後ろから呼んだ。