4月4日 高知県 ヒデ宅

5:15

なんだか外が騒がしい。

昨日も大学のサークルの飲みで、帰って来たのは3時過ぎだった。

これじゃ、眠くても眠れない…

あまりにも騒々しいので、ヨタヨタしながら部屋のカーテンを開けてみた。


視界に飛び込んできたのは慌てふためく人、人、人…

車は猛スピードで、人混みの中を走り抜けていく。


「ん?なんだ?」


あまりにも異常な雰囲気だったので、急いでサンダルだけ履いて外に出てみた。


「早く、早く!とりあえず駅に行け、駅に!」
「持ってくのは必要なものだけにしなさい」
「はぐれないようにちゃんとついて来るのよ」
「車乗せてもらえ、車」

ただ事ではない様子だが、一体何が起きてるのか…

「すいません、どうしたんですか?」

おれは目の前を通り過ぎようとした男を捕まえて聞いた。


「どうしたじゃねぇよ。毒ガスだよ、毒ガス!」


…毒ガス?

男は手を振り払って先へ行こうとしたが、おれは力を入れ、その男をまた引き寄せた。


「手、離せよ!」

男は必死に逃げようとする。


「すいません、毒ガスってなんのことですか?」


「あー、もう時間ないんだよ!携帯見てみろよ!いいから手、離せ!」


…携帯?

男はおれが一瞬手の力を緩めたのを見逃さずに手を振りほどいて逃げて行った。


おれは急いでポケットから携帯を出して開いてみた。




……
………



昨日まで平穏な生活を送ってきた。

3日前のテロをニュースで知った時も楽観的にしか考えていなかった。


理解するのに数秒かかった…



…やばい

初めて危機感が込み上げてきた…