辺りをみると、逃げてきた人達は、まだ座り込んでいる者もいるが、それぞれ重い足どりで歩き始めている。


まだ混乱している者、現実を受け入れた者…



「そうだねユイ、早く家に帰ろう。ちゃんと送っていくからね」


幸いなことに電車は止まっていたが、渋谷とは関係のない路線のバスは動いていた。


バスは非日常だったおれとユイを日常のように運んでいった。


「一人でだいじょぶ?今日一緒にいようか?」
こんな時だ、別にやらしい気持ちで言ったのではない。

ユイもおれも一人暮らしで、ユイを一人にするのは心配だった。

「…だいじょぶです。今日は本当にありがとうございました」

「ほんとにだいじょぶ?何かあったらすぐ電話してね。すぐ駆け付けるから」

おれ自身一人になるのがちょっと怖い部分があった。

ユイにおやすみを言うとおれも一人暮らしをしているアパートへ帰った。