唇をギュッと噛み、菜箸をギュッと握りしめながら踵を返してキッチンの方を向いた。


そんな私の耳に――





「俺は優子が作った物ならなんでもいい」





そんな言葉が聞こえてきて、キッチンに向かっていたはずの私の両足がピタリと動くのをやめた。





「分かったか」





今の幻聴じゃないの?





「本当ですか…?」

「嘘を言う訳ないだろ。それに俺は幼少から食事に煩い方だ」





好き嫌いの間違いじゃないですか?と思ったのは内緒。





「舌もわりと肥えている方だ。そんな俺が何も言わないのはその料理が絶品だと思ってるからだ」





本当は味覚音痴だったりするんじゃないですか?と思ったのも拓斗さんには内緒だ。