何か言われそうで怖いからってさすがに渡すお弁当を玄関に置きっぱなしにはしたくないし、できるなら直接渡したいの。


そうとぶつぶつ呟いてると、バタンッと扉の音が聞こえてきた。





「待って下さい…!」





そんな音を聞きリビングを飛び出るといつもの姿の拓斗さんが玄関に立っていた。





「拓斗さん」





拓斗さんの名前を呼べば視線を私に向けてくれた。





「なんだ?」

「あの、これ…」





拓斗さんの目の前で立ち止まり包んだお弁当箱をおずおずと差し出すと、微かに拓斗さんの目が少し見開いた気がして。





「これお弁当です。良かったら受け取って下さい」





なんだかバレンタインデーを渡すような緊張感。