サササ……!





礼子は聳え立つビルの壁に背を当て、右手の人差し指と親指をピンとと伸ばして、それを左手で包むように重ね合わせた。







摺り足で移動するものの、、鍛錬していない為に見様見真似で、更に時々無駄に前転を行う。








「……お前、何をしているんだ?」









子供の竜騎が冷ややかな目で訪ねると、大人の礼子は胸を張って答えた。









「何って……スパイゴッコに決まってるじゃないの! バキューン!」









そう言って、先程から立てている人差し指を向け、鉄砲のように見せてみた。









この2人の精神年齢、入れ替わればいいのに。









「そんな事をしなくても大丈夫だ。ヤツらの気配はしないからな」








気配?

そんな物が分かるのか?









「なら、早めに言えっちゅーの!」









珍しく礼子がノリで突っ込み、竜騎は結構な痛さの衝撃を食らった。








「なっ!? この無礼者!!」









「いいえ竜騎坊ちゃん。今のはツッコミと言う、平民貴族関係なく常識的に行われるマナーでございまする」








適当な事を言いくさる。








しかし、ここまで、さも当たり前に堂々と言われたら、無知な彼なら納得してしまう。









「分かった分かった。とにかく行動は無意味だ。早く安全な場所に、余を連れて行け」









子供のクセに可愛げがないが、礼子は金の為に素直に従った