蘭自由故にいろいろなことに興味がわく。

私は囚われの身。

だからこそ興味なんてない。

それを思い知るのはつまらない。

だけど蘭と話していると嫌でも思い知らされる。

「あんた結局どうするの?」

「え?」

「紅に食べられるの?」

「だからそんなわけないだろ!」

「怒鳴るな。」

私が殺気を込めて睨むと蘭はその場で絶句する。

いいや、喋れないと言った方が正しいだろう。

華の特有霊力の一つ言霊。

言葉だけで相手を縛ることができるもの。

「じゃあ帰りたいの?」

「ああ」

蘭はすこし感情を抑えながら答えた。

「そう。」

私はゆっくりと自分のベットに落ちている扇を拾う。

「じゃあ返してあげる。」

「え?」

「もう二度とこんなところにこないことね。」

私は扇を広げて風を作る。

そして一気に蘭に向けて放つ。

その瞬間蘭は消えた。

いいや、正確に言えば人間界へと帰ったのだ。
「疲れた」

別に術を使ったからではない。

人間と触れあったからだろう。

でもなぜ蘭を人間界へ返したのだろう。

「キマグレね」

ひとりで呟き納得する。

そして窓辺へ行き煙管を吸う。

見上げた夜空は月夜。

ああ、私はなにがしたいのか分からない。

「ん・・・・」

気がつくと俺は自分の部屋にいた。

今のは、夢か?

女郎蜘蛛の住みかにつれこまれて食べられそうになった。

そんな時紫という女の子に出会った。

「ゆめにしてはリアルだよなあ。」

そんなことを思いながら起き上がる。

そして冷蔵庫からミネラルウォーターと取り出し呑む。

「ふう。」

少し落着いた。

だけど紫と名乗る少女の姿が頭から離れない。
16歳には見えない美しい不機嫌な少女。

まあ、夢か。

俺はベットまで歩み寄ると驚いた。

「まぢかよ・・・」

ベッドの上には着物が落ちていた。

「これ、紫のだ・・・・」

そう。紫が俺にかぶせたものが落ちていた。

「夢じゃなかったのか・・・」

そう思いながらさっき起こったことを思い返す。
“貴方は私の餌よ”

そういって微笑んだ紫。

じゃあ何故俺を逃がしたんだ?

わからない。

それに彼女が女郎蜘蛛には見えない。

「華・・・・」

そう。彼女の階級は華。

一番最高位。
もう一度会いたい。

そう思う俺は彼女の術にかかってしまったのか?

いいや、惚れたんだな。

この着物があれば大丈夫また逢える。

そんな思いでおれは駆け出した。
「あら、いきなり尋ねるなんて失礼じゃない?」

私は不機嫌に振り向く。

そこには涼しげな雰囲気をまとった男、流星がいた。

「失礼。急にあなたのお顔が見たくてね。」

「嘘をつかないことね。」

私は静かに睨みつける。

「怒らないでくださいよ。まったく私はあなたを怒らせる名人のようですね。」

そう言って流星は笑いながら近づく。

私は窓の外に視線を移す。

「だけど今日のあなたはすこし機嫌がいいようだ。」

そう言って私のそばに座る。

「なぜ?」

「いつも私が急に訪れるとあなたは決まって華を残して消えるでしょ?」

そう。

私はいつも機嫌が悪い時は術を使い消える。

その場には術を使った後の華が残る。

「お望みとあらば消えるわよ?」

私は静かに微笑みながら空を仰いだ。
「いいや、このままそばにいて頂きたい。」

そう言って流星は私の方を見つめてくる。

「ああ、そう。」

私はそんなこと構わず外を見つめる。


「実はお話があって今日は来たのです。」

「なに?」

「私と結婚していただけませんか?」

「・・・・」

ああ、やはりそう来たか。