「みく?怒ってる……よな?」


「ううん……なんでもないから」


「ほんと、ごめん。クラスのやつらが急に押しかけてきてさ」


違うでしょ。
女の子じゃん。


「うん。わかった」


あたしは愛想笑いをして、また今度という誘いに適当な相槌を打った。

苦しい。
苦しいよ、和兄ちゃん……

本当はもうあたしの入る隙なんてないの?
たった1年なのに。

和兄ちゃんは遠くに行って、心まで奪われちゃったの?

嘘だけは、つかれたくなかった……

正直に女の子といたって、言ってほしかったよ。

あたしそこまで、子どもじゃないんだよ?

キスだって、されちゃったんだよ……

あなたのことが好きなのに。

去っていく和兄ちゃんの後姿を、ひっそりと柱から見つめていた。