そばにいてくれたからⅡ




千秋くんがそんなこと…!



「今日返すつったのにまだ返せねぇんだよ!」



おじさんはものすごく怒っている。


これはヤバそうだな…



「さっさと返せ!」



おじさんの怒鳴り声に千秋くんはビクッと震えた。


千秋くんきっと怖いんだ。



「…何円返せばいいんですか?」


「あ?」


「あたしが返します、何円ですか?」








千秋くんを守れるのはあたししかいない。


お金は自分のはだいたいあるし…



「2万だ」


「わかりました」



あたしは財布を出しておじさんにお金を渡した。


おじさんはお金を受け取って行ってしまった。


とりあえずなんとかなった。


あたしは千秋くんのほうを向いた。



「千秋くん、なんであんな人にお金借りたの?」


「……食いもんなかったんだよ」


「食べ物…?」








まさか…



「千秋くんも家に帰れてないってこと…?」


「……」



千秋くんは黙り込んだ。


けど本当に家に帰れてないと思った。


千秋くんの切なそうな顔を見て…









あたしと千秋くんは近くの土手に移動した。


土手についてあたしと千秋くんは座った。



「なんで家帰れないの?」



あたしは早速千秋くんに質問をぶつけた。


高秋くんだけじゃなくて千秋くんまで帰れないなんて…


一体育島家はどうなってるの?








「家はほとんど高秋以外の年上のやつらが独占している」


「じゃあ千秋くんは?」


「俺はあの家にいても召使いみたいなもんだった」



千秋くんは歯を食いしばり拳を握る。



「いつもあいつらにコキ使わされて辛いんだよ…!」


「……」


「高秋はほんとにずるいやつだ!高校生だから家だって出て行ける!」


「……」


「俺を取り残して!!」








それは千秋くんの本音だった。


今まで高秋くん、いや兄弟みんなに言いたかったこと。



「高秋なんて卑怯な道に逃げたかっただけだ」


「千秋くん…」


「辛い思いしたくなかったから…」


「それは違う!」


「え…」








「高秋くんだってほんとは家から出て行きたくなかったんだよ!!」


「……」



ほんとは、ほんとは…



「ふたりとも辛いんだよ…」


「……」


「千秋くんもほんとは高秋くんといっしょにいたいんでしょ?」


「俺は…」


「お母さん、お父さん、兄弟みんないっしょに暮らしたいんでしょ?」


「……」








すると千秋くんの目から涙がこぼれた。


涙はどんどん流れていく。



「帰ろうよ」


「……」


「もう一度幸せだった時に帰ろう」


「……」


「みんなといっしょにさ」







あたしは千秋くんの背中を優しく撫でた。


千秋くんは体育座りになって顔を伏せた。



「行こう、お店に」


「…うん」



その声は本当の千秋くんの声に聞こえた。


高秋くんといっしょにいたいんだよね。


千秋くんは本当は家族のことが大好きなんだ。