するとその人は高秋くんの部屋の中に入って行った。
鍵をどうやって開けたのかはわからない。
「行くぞ!有菜!」
「うん!」
あたしたちはアパートの階段を登って高秋くんの部屋の前に立った。
あたしと礼羅は目を合わせ、お互い頷いた。
礼羅はドアノブに手をかけて、ドアを開けた。
「おい、こら泥棒!」
すると人影が止まった。
礼羅はすぐに人影のほうに行く。
「てめーが高秋の家に勝手に入ってるやつだな、顔見せろ!」
「辞めろ!!」
礼羅は暴れないように取り押さえる。
あたしも礼羅に近づいた。
「礼羅」
「おい…」
礼羅の顔は驚いている。
「このガキ、高秋の弟じゃないか…?」
「え!?」
礼羅はあたしに見せるように方向を変えた。
それは高秋くんの弟・千秋くんだった。
「離せ!」
「「……」」
なんで千秋くんが…?
あたしと礼羅は千秋くんをお店まで連れて行った。
礼羅は千秋くんをテーブル席に座らせた。
「お前いつから泥棒の道に進んだんだよ?」
「ちげえよ!!」
千秋くんはテーブルをおもいっきり叩いた。
あたしは隣のテーブル席に光太郎くん、潤希くんと座っている。
「ガキ、いくら兄弟でも勝手に兄貴の家入っていいのかよ?」
「……」
千秋くんは下を向いて黙り込んでしまった。
「おい!ガキなんで侵入してたのか教えろ!」
「礼羅、そんなんじゃ答えないよ…」
「光太郎くんの言うとおりだよ、もうちょっと優しく…」
「んなのガキだろうがジジイだろうが関係ない!」
まあ…、こういうところが礼羅らしいんだよね。
でもなんで高秋くんの部屋入ったの言わなかったんだろう?
別にいいと言ってもいいと思うのに…
「あれ?なんで千秋いるの?」
「高秋くん!」
高秋くんはお店にいつの間にか戻ってた。
千秋くんがいてきょとんとしてる。
「高秋、こいつお前の…」
「俺帰る!!」
千秋くんは礼羅の言葉を遮り、席から立った。
「おい!」
「俺なんかほっとけ!!」
千秋くんはドアをおもいっきり開けて出て行った。
「一体何が…?」
「実はよ…」
礼羅は高秋くんにこれまでのことを話した。
「ってこと」
「ふーん」
「『ふーん』って…」
「まあ、知ってたから」
「へー、って!?」
知ってた!?
「高秋、お前知ってたのに…?」
「ついさっきだけどね」
「さっき?」
「アパートに帰ったら大家さんが『怪しい二人組と小学生ぐらいの子供がいた』って…」
「……」
「僕の部屋から出て行ったって…」
そういうことですか!
てかあたしと礼羅、不審者って思われたのね!
「でもなんで小学生が千秋くんってわかったの?」
すると高秋くんの顔は嬉しそうになった。
「千秋はそういうやつだから」
「え?」
「ほんとは千秋、家族のこと大好きだから」
そっか。
家に帰れない高秋くんのことが心配で様子を見に侵入してたってわけか。