人っ子一人いない、ひっそりとした建物裏。

私を囲うようにして、修の腕が左右に延びていた。


「なに?どうしたの?」

妖しい微笑みを見せる修に、逃げる場所もないのに、後ずさってしまう。


声も発せない、息もできないくらいに近く、
顔を寄せてくる修に

戸惑う私は視線を泳がすことしかできなかった。


「ね…早く戻らないと、みんなが心配するよ。」

この状況から脱したくて、逃れるように動こうとするのに、

修はさらにその
腕の間隔を狭め、私を逃がすまいとする。


「大丈夫だよ…きっとみんな気にしてない。」


そんな無責任な言葉を投げて修はなおも私を追いつめる。

きっと、また私をからかっているのだ。


けど、いつもならここで止めてくれるのに…


「ね、誰か来ちゃうよ…修、やめよ?」


懇願するように修を見るのに、その目は変わらず、何を映しているのか、
妖しく光るだけ・・・。


「ほら…こっち向いて。」