「お気をつけて~」


車掌さんが手をあげて
私たちを見送る。



私は大人料金の510円を払って駅を出た。



ここに来ると毎年思うことがある。






―—もっと強く結衣の手を握っていたら…





無駄だとは分かってる

私たちはこの駅で別れた。




あの時、もっと泣き叫んでいたら
あの時、電車の前でこけていたら
あの時、あの時……










「舞依……?」






結衣?……結衣!!




やっぱり嫌な予感なんてない。



こうやって会えてるんだからね!





「結衣~~~~~!!!」




「やっぱり舞依だぁ…!」





二人は抱きしめあった。


5月9日




「舞依、誕生日おめでとう」

「ん。結衣も。生まれてきてくれてありがとう!」




ありがとう………