家について時計を見るともう深夜
お風呂に入り一息ついてから
ベッドに寝転んで電話をかける
『バカップルのせいで
会いたくなっちゃった』
「何だよ、バカップルって?」
『帰りの電車にいたの!
目の前でイチャイチャしちゃってさ〜
もうっ!』
「まあ、その分温泉でな♪」
『文哉が言うとイヤらしく聞こえる』
「よく分かってんじゃん
あ〜、まじ観月欠乏症!!」
『あはは!何それ!』
「まあ・・・覚悟しとけよ?」
『ん?うん・・』
「じゃあ、そろそろ寝るわ」
『そうだね、おやすみ』
電話を切って布団をかぶる
文哉の言葉の意味は何だろう?
だけど楽しみなのは変わらない
いろいろ考えを巡らせながら眠りについた
今日は待ちに待った温泉旅行!
『わあっ!』
着いた旅館は川の近くにあって
澄んだ空気に包まれていた
『綺麗なところだね!』
「マイナスイオン浴びまくりだな」
たくさんある旅館の中で
ここを選んだのは正解だった
自動ドアを通り、広い玄関に入ると
女将さんらしき人が出迎えてくれた
「松下様、お待ちしておりました
長時間の移動でお疲れでしょう?
お部屋にご案内しますね」
すると可愛らしい仲居さんが出てきて
部屋に案内してくれた
『すごーい!』
部屋の窓からは川がばっちり見える
私はキョロキョロして
部屋の色んなドアを開けた
『わ!お風呂ついてる!
トイレきれー!
あ、文哉!浴衣もあるよ!!』
「観月はしゃぎすぎ!」
「お料理は6時頃お持ちしますので
それまで辺りを散策されてはいかがですか?」
時計を見るとまだ3時
『じゃあそうしよっかなー♪
文哉、行こ!』
私は文哉の手を引いて部屋を出る
「お、おい!
すみません、バタバタしちゃって」
「いいえ、いってらっしゃいませ」
可愛らしい仲居さんはにこっと微笑んで
見送ってくれた
久々に繋ぐ手と手
旅館までは荷物があったから
繋げなかった
まあ・・・
会ったとたんに抱き合ったけど
『ねぇ、あの女将さんどうして松下だって
分かったのかな?』
「ああ・・・チェックインする時間
伝えてあったからじゃないか?」
『へー』
「何で?」
『ん?別に、ただなんとなく!』
私達はしばらく温泉街をうろうろして
旅館に戻った
「まだ時間あるなー」
『お腹空いたね!』
「観月、こっち来て?」
テーブルに向かい合って座っていた文哉が
手招きをする
『なあに?』
横に座ると文哉はごろんと寝転がって
頭を私の太ももに乗せた
顔を上にして私と見つめあう形になる
「ん?なんか感触変わった!
やっぱり痩せたよな?」
『そうかなあ?』
なんて言ってみるけど
本社に異動してから4キロ痩せた
まあ、異動したばっかのころより
これでも増えたんだけど・・・
「お前ただでさえ細いのに・・・
ちゃんと食ってんの?」
『うん、食べてるよ!』
新人研修が終わってからはね
とは言えない
「とりあえず食う時間を仕事にあてるなよ」
『だって・・・』
「だってじゃねえ!
ったく・・・」
すると文哉はむくっと立ち上がって
私を抱き上げた
『わっ!』
文哉の膝の上に乗せられて
後ろからぎゅっと抱き締められる
「は〜、充電・・・」
『ばかっ!』
首元に埋められる顔にびくっと
反応してしまうと
文哉が後ろから覗きこんできた
「観月、期待してる?」
『なっ!!!!』
体温が一気に上昇する
「顔真っ赤だし!可愛い」
『んっ、や・・・』
首に甘い痛みが走る
『ちょっと、文哉っ!ストップっ・・・』
体を必死に動かしても文哉の長い腕が
離してはくれない
甘いキスは続く
『ほんとっ、むりっ・・・
待って!』
「無理じゃないだろ?」
『まだダメ!!!』
私の手を握っていた文哉の手を
全力で振りほどいた
文哉から脱出してキッと睨み付けると
文哉は困ったような顔をした
「だめ?」
『今はダメ!!!!!』
「ちぇ〜っ」
『ほら、もう少しでご飯だし!』
「飯より観月が食べたい」
『アホなこと言わないで』
「本気なのに・・・」
口を尖らせて拗ねる文哉は
何だか大きな子供みたいで可愛かった
しばらくして
ノックされて料理が運ばれてきた
「うまそー!」
『すごいすごい!!!』
料理は地元の海の幸や山の幸を
ふんだんに使ってあった
もちろん味は絶品
『おいしー♪』
「観月ってほんと美味そうに食べるよな」
『だっておいしいんだもん』
「ねぇ」
そういって文哉はじっと私を見つめる
『な、何・・・』
「あーんってして?」
私の体温は急上昇
口を開けて待つ文哉の顔も赤い
『言ったわりに照れてるし』
「うっせ」
私はお刺身をとって文哉の口へと運んだ
「ん!上手い♪」
顔をほころばせる文哉に嬉しくなる
「はい」
今度は文哉がたけのこをつまんで
私の口元に持ってくる
ぱくっと頬張ると上品な和風だしと
たけのこの食感が口に広がる
『おいしい!!』
それをみて満足そうに微笑む文哉
幸せすぎて
時間が過ぎるのが怖いくらいだった
料理を完食してお腹も落ち着いてきたので
温泉に入ることにした
『混浴あるんだ・・・』
大浴場の入口の前に間取り図があった
女湯と男湯から少し離れたところに
混浴があった
『・・・入ってみる?』
おそるおそる聞くと思いっきり睨まれた
「ほかのやつに観月の裸見せるなんて
出来るか!!絶対ダメ!!!!」
『分かった!もう・・・
恥ずかしいなあ
じゃあ、1時間後にね?』
文哉と分かれて女湯に入る
温泉だけでも入れるらしく
たくさん人がいた
温泉はいくつか種類があり
露天風呂もあったので
あっという間に1時間が過ぎた
自販機でスポーツ飲料を買って
ベンチに座って待っていると
肩をとんとんと叩かれた
振り向くと満面の笑みの
チャラそうなお兄さん
「ここで何してるん?」
『あ、彼氏を・・・』
「なんや、彼氏おっそいなあ!
もう行ったんちゃう?」
『いや、そんなはずは〜』
「俺、この辺にめっちゃ夜景綺麗なとこ
知ってんけど、行かへん?」
私の話も聞かず隣に座るチャラ男
だんだんとチャラ男が近づいてくる
「あっ!丁度ツレも出てきたし
な?行こうや〜」
「翔何してるん?
うわ、美人やな〜お姉さん!」
入口から出てきたチャラ男②が
私の手を握る
『あ、いや、離してください!』
「嫌なんてそんなこと言うなや〜」
男2人の力にかなうわけもなく
私は立ち上がってしまった