「ちょ、瀬尾ちゃん!」

横を通り抜けた私の腕をぱしっと掴まれた

「話してやってよ、ね?」

『それは・・・無理です』


このまま本社に残ることが決まった以上
もう文哉と会うことはない
話したら・・・


「あいつ、瀬尾ちゃんがいないと
だめなんだよ
頼む!!」

両手を合わせてお願いする横山さん

『・・・分かりました』




その日の夜10時
私は文哉に電話をかけた
もちろん仕事は終わってないので
会社にいる


「観月?」

か細い声は少し痩せた文哉を創造させた

『文っ・・哉』


私の涙腺は一気に崩壊した
声を出さないように必死にこらえた

「会いたい・・・」


文哉も泣いているようだった