泣く余裕もなく
頼れる人もいない

文哉がいたら・・・
何度そう思っただろう

だけど連絡する暇もなかった


「観月、ちょっと頑張りすぎだよ」

『うん・・・』


陽子も手伝ってくれるけど
私の納得のいくものじゃないから
また私が手直しをする

でもそんなこと言えるわけなく・・・


携帯が社長からの電話を知らせる
基本的に社長からの電話は呼び出しなので
電話は出ずに社長室へ急ぐ


役員室より重くて大きいドアをノックする

秘書の神宮寺さんがドアを開けて
中へ通してくれた

『お呼びですか?』

「ああ、瀬尾くん
君が来てから仕事の質がぐっと上がった
取引先も増えた!」

『それは・・・お役に立てたようで』

「支店の方もなんとかやっておるようだ
・・・やはり君は本社に必要な人間だ」

『社長、ですがっ!!』

「給料もあげておく、心配するな!
ただ、休みはきちんと取らんとなあ?」

『あ・・・すみません』

「それに、質は上がっているが
雰囲気は悪くなっているそうじゃないか
噂も耳にするぞ?」

『申し訳ありません』