「霧多 鈴奈さまへ

 元気でやってますか?
 
 元気でやってると信じて、俺は、この手紙を書きます。

 バカな彼氏でごめんな。あ、俺はもう彼氏じゃないかっ!!

 俺は、やっぱり春ちゃんのこと好きなんだよ。

 でも、俺は、春ちゃんとうまくやってけないと思う。

 それは、まだ鈴奈への想いがあるから。

 鈴奈がいない俺の隣は、ぽっかり穴が開いていて、

 鈴奈がメールの送らない携帯は、机の隅に置かれていて、

 俺って、鈴奈中心で回ってたんだな。

 鈴奈のこと、また傷つけちまうかもしんない。

 春ちゃんのこと想っちゃうかもしんない。

 でも、俺は、鈴奈のことが学校一好きだからさ。

           古村 秀樹より」


書き直さなかった。

書き直せなかった。

読み直さなかった。

読み直せなかった。


この手紙を鈴奈の家まで行き、ポストに入れた。


下駄箱に入れておけば、誰かに見られる。


直接渡せば、きっと捨てられたり、返されるってわかってたから。



返事は、返してくれなくてもいい。

読んでくれるだけでいい。

破って捨ててしまってもいい。


でも、本当の俺の気持ちだから。


そう、封筒の外に書いた。


いじめられてる子への励ましのような言葉を

封筒に書いている俺。


今までなら、こんなことしないキャラだったのに。