『――杏里』









耳元で突然
自分の名前を呼ばれて
驚かない人間はいないだろう。








『のわあああ?!な、ななんだお前!いきなり耳元で喋りかけるな!』







『だって杏里、俺が近づいても気付かないから。』









『考え事してたんだよ。』










『考え事って、昨日のこと?』













図星。










『だっ…!誰もそんなこと言ってない!』










『昨日の印、ちゃんと綺麗についてた?』














『うっうるさい!あんなものすぐに消える!二度とつけるな!近寄るな!』













『消えたらまたつけるよ。』









『つけなくてけっこうだ。』












『だって杏里は俺のだし。』










『だからお前のモノになった覚えはないと言っているだろう。』














『……わかった。』








そのとき
また日向の表情が変わった。









昨日と同じ顔に。