綾ガキの言葉を遮るように、着信音が鳴り響いた。あたしじゃないんだけどな?



「あっ、あたしだ!」



綾ガキがジャラジャラした飾りが付いたケータイを取り出す。その隙に山下くんは綾ガキから離れた。ナイス、山下くん!



「もしもし、お母さん?」



『綾!今どこにいるの?今日塾の日よね?さっき先生から綾は来てないって連絡があったんだけど!』



綾ガキの母よ、離れているあたしにまで声が聞こえていますよ。



「い、今から行こうとしてたの!」



『本当よね?ちゃんと行かなきゃケータイ禁止+ヒロちゃんに会うのも禁止にするからね!』



ぜひとも、山下くんに会えないようにしていただきたいです!そしたら、あたしと山下くんの時間が増えるもんね♪



「わ、わかってる。じ、じゃあね!」



お母さんパワーのせいか、シュンとしてケータイをポケットへしまう綾ガキ。少しだけ可哀想だけど、ライバルに変わりない!



「綾ちゃ~ん、お塾に行かなくちゃね?」



「うっさいよ、オバサン!ヒロちゃんごめんね?あたし今から、ヒロちゃんのお嫁さんになるための勉強してくるね!」



「あ、おう」



「オバサン、ヒロちゃんに手出さないでね!!」



「山下くんはあたしの旦那サマ(になる予定)なの!誘惑しまくってみせるわ!」