「……はぁ」
山下くんがため息をつきながらあたしを振り返る。ヒリヒリするおでこを押さえながら、あたしは苦笑した。
「ほら!パンフレットは死守したよ!」
「そこ威張るとこ?」
「あはは」
「前向いて歩いてなかったのかよ」
「山下くんを見て歩いてて……えへへ」
「……アンタ、バカにもほどがあるって」
そう言って山下くんが笑った。あっ……山下くんが笑った!?キ、キュ~ン!
バサバサッ
「あ、落ちた」
持っていたパンフレットを落としてしまったあたし。山下くんが座り込んで、パンフレットを集める。
「ほら」
あたしの前にパンフレットの束を差し出す山下くん。あ、こんなこと前にもあった気がする。たしか、入学式の時だ。あたしのハンカチを拾ってくれたんだよ。
「山下くん、覚えてる?入学式の時にね、あたし達話したんだよ」
山下くんは覚えていないかもしれないけど、あたしの心には焼き付いているんだよ。
「……覚えてない。悪い」