「お前、そんな急ぐことないだろ。暗いんだし、怪我するぞ」
「ダメ!急がないと……うわっ」
気づいた時には、階段を踏み外していた。あたしの名前を呼ぶ阿木くんが遠くなり、スローモーションのように後ろに倒れていく。
やばい!この機材高いんだぞって、うっちー先輩に言われてたのに壊しちゃう!?
「っぶねー」
でも、背後から誰かに支えられたんだ。え?誰かが……助けてくれた?
「滝沢、大丈夫か?」
「う、うん。あたしは大丈夫……」
「……本当に大丈夫かよ」
阿木くんの言葉の後に背後から聞こえた声。後ろを見ると、なんと山下くんの顔が超近くにあったのだ!
「え!?やっ、やまっ、山下くん!?」
「だったら、何」
「あたっ、あたしを助けてくれてる!?」
「じゃなきゃ、何してるように見えんだよ」
嘘……うそうそ!山下くんが助けてくれた。あたしを助けてくれたんだ!
「早く立って。重い」
そうだ、今山下くんに重心預けちゃってる感じだ!あたしは慌てて立った。
「怪我は?」
「大丈夫!ありがとうねっ!」
やばいよ、好きな人に助けられるってこんなにドキドキしちゃうんだ。