「ちょっ、うっちー先輩!あたしはひ弱な女の子なんですよ~」
「阿木、あとは任せた」
すたこらとステージの端の音響の方へ逃げたうっちー先輩。こんの~自分は若池先輩のところに行ったくせに!
「ほら、つべこべ言わずに運べ」
それから、渋々照明の機材を運ぶ作業に入った。
「ったくさ、絶対あの子山下くんのこと狙ってるよ!だって距離が近過ぎるもん」
大き過ぎる独り言をブツブツ言いながら、機材を手にする。うむ、やっぱり重いじゃん!これを体育館の2階まで運ぶなんて……無理!
「阿木くん、こりゃ女子の持てる物じゃないね!」
「独り言言ってる余裕があんなら持てるだろ」
「聞こえてるなら何か言葉を返してよ~」
「あ?危ない関係に見えるな」
「え!?やっぱり!?」
ビックリして、機材を持つ体がフラッとしちゃったじゃん。
「ほら、また近づいたなー」
「嘘っ、あたしも見る!」
階段を登り終えた阿木くんからは、2人の様子が見えるらしい。あたしも急いで登らねば!機材を両手で持ち、右肩も支えにして一段ずつ登る。