心臓がドキドキする。そりゃ、隣に愛しの山下くんがいるからってのもあるんだけどさ。どんな話をするのか……ドキドキする。
「……葉月先輩のことだけど」
き、きた!
「里津に聞いたままだから」
メロンパンを一口かじった山下くん。あう~、食べられちゃうメロンパンが羨ましい。
「俺が中2ん時、他校だった葉月先輩はウチの空手部の先輩と付き合ってた。それ聞いたでしょ」
「うん。でも、顔出してたけど、いつからか葉月は来なくなったって……」
それプラス、山下くんの様子がおかしくなったって聞いたよ。
「あの人さ、ちょうど部活の先輩が休みの時に部に顔出したことがあって。それで、その休憩時間に俺は呼び出された」
「葉月に?」
「あぁ」
なんだろう、胸騒ぎがする。
「武道館の裏に連れて行かれて、何の用かと思えばイキナリ抱きつかれた」
え?
「俺のことが気になってるって言われて、ワケ分かんなくてとりあえず引き離そうとした。そしたら……」
「そしたら?」
秋風がスウッとあたし達を包み込んだ。
「キスされた」