「夏生ぃ~もうあたしとろけちゃいそう~」
「あーそうだね」
「もうね~山下くんしか好きになれないみたい~」
「数学も好きになってほしいね」
放課後。あたしは夏生と図書室にいた。手にはシャーペン、目の前には数学のテキスト、頭の中には山下くん。
「どうしよ~数式が山下くんからの愛の言葉に見える~」
「そう思ってすればいいわ」
「あ~また頭撫でてほしい~」
「はぁ……逆効果みたいだけどね。ちょっと沙良、アンタ全然はかどってないから」
「嘘だ~」
「嘘じゃない。じゃあココ解けるわけ?」
夏生が指差す問題を見て、あたしの頭から山下くんが抜け去った。
「…………トイレ行ってもいい?」
「これ解けたらね」
「夏生の鬼~」
「私語は謹んで。ほら、ちゃんとしないと、アンタガチでヤバイんだから」
「は~い」
生温い返事をして渋々、問題を解き始めたあたし。夏生の放課後の時間も取っちゃってるし、少しは真面目にしなきゃ!ね!
「夏生、ココなんだけど」
「そこはここのXがこうなって……」
それから図書室を閉める時間まで、あたしは夏生と勉強をしていた。