「夏生~もう放課後だよ~。山下くん、取りに来ないんだけど~」



そして、いつの間にやら1日の終わりになっていた。しかし、山下くんが教科書を取りに来る気配はなかった。



「もしかしてコレ、山下くんのじゃないのかも!?」



慌てて教科書の後ろを見てみると、『山下紘樹』と書かれた文字が並んでいる。間違いない、これは山下くんのものだ!



「山下くん、それがないと明日からも困るだろうね」



帰る仕度をしながら、夏生が呟く。



「うっ……誰かに借りるでしょっ」



「それが女の子だったらどうするの?山下くんとラブな関係に……」



「そんなの絶対やだ!返してくる!」



「あたしは帰るよ」



夏生が変なこと言うから不安になったじゃん。無理!山下くんが他の女と関係を持つなんて、耐えられないもん!



「山下くん!」



山下くんの教室へ着くなり、ドアを開けてそう叫んだ。……が、



「……まだ終礼中だ」



先生が話をしている最中だった。すみませ~んと小声でドアを閉め、恥ずかしさのあまり身を縮めた。