「何それ。手土産?」
「つい、山下くんの教科書奪ってきちゃった~」
「アンタ、ついに山下くんの私物まで狙うようになったの?」
呆れたわ、と頬杖をつく夏生。
「違うよ!いや、違くはないけど。でも!山下くんが葉月に関しての質問に、答えてくれなかったから……」
「言いにくいことだってあるでしょ。どうすんの、教科書」
「あたしからは返さない!取りに来るの待ってて、その時にまた聞き出すんだもんっ」
と、同時に授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。あ、れ?山下くん……取りに来なかった!?
「どうした、滝沢。ボケっとしてっぞ」
「い、いえ、何も」
「そんなお前には、教科書の156ページの、以前は~のところから読ませてやろう!」
「教科書忘れました」
「どや顔で言うな。隣に見せてもらえ」
もう、先生ったら、教科書の内容だけじゃなくて、応用編として、乙女の心情も読み取ってほしいもんだよ!
「今、授業どころじゃないのにっ」
「じゃあ何の時間だ」
あ、小さな愚痴が聞こえちゃっていたらしい★あたしはこの授業で、ずっと先生から痛い視線を向けられたのだった。