「だったらもういいだろ」
「よ、良くないから来たの!」
「あ?」
「その、葉月って人は山下くんと何があったんでしょ?だから、体育祭の時にあんな態度とったんでしょ?」
「…………」
「山下くん?」
「顔を見たくない。それだけ」
「その理由を……!」
「関係ない」
鞄から教科書を取り出して、机へ入れていく山下くん。
「関係なくないよ。山下くんのことが好きなのに、そのことを知っちゃいけない?」
教室には他の生徒もいて、あたしのか細い声は届くか届かないかくらいの声量だった。
「知らなくていいでしょ」
その瞬間あたしはある行動に出た。山下くんの鞄から1冊の教科書を取り出した。
「ちょ、何すん……」
「コレが欲しいなら、教えて!」
なんとも幼稚な賭けに出てしまったのだ。
「あたしの気持ちをそんな簡単に考えられちゃ困る!本気なんだから!いいね!これは預かっておく!」
そのまま自分の教室へダッシュしたあたし。このタイムは自己記録を更新したと思うよ!
「夏生ぃ~」
そして、夏生の元へ向かった。