「あの…風邪ですか?」



「違う、ただ咳がでるだけだ。」



心配そうに俺を見る田中に、今朝永田さんに見せたような笑顔を向けた。


「…じゃあこれ。よく効きますから。」



「え?」



そう言って田中が出したものは咳止めの薬だった。



「お前、いつも薬もってんのか?」



「一応ですよ。何がおきるか解りませんし。」



さすが田中財閥の娘として育ってきただけはあるな。



誰にも迷惑をかけないようにと準備してる所は尊敬するほどだ。




「ありがとな。有り難く飲ませてもらうよ。」



「はい、お大事に。」




軽くお辞儀をした田中は俺に振り返りもせず教室に帰っていった。