「よし、全員出席だな。」
全ての生徒の出席を確認し、配るように渡されたプリントを配る。
後は連絡事項を話すだけ。
そんな毎朝普通にこなしていたことが今はこんなにしんどいとは…。
風邪なんかって言ったけど、あなどれないな。
「先生大丈夫?」
俺の様子をみかねてか、教壇の斜め前に座る上谷が話しかけてきた。
「お…前、ゴホッゴホッ…人の心配し…てる場合か?」
「え?」
「今日…数学小テストあるからな…。」
「…先生早退すれば?」
「そうだな、小テストやり終わったらしようかな。」
「くっそぉぉ!!」
この上谷と俺とのやりとりは、いつのまにかこのクラスの名物になっていて、今日もクラスはその光景を笑っていた。
でも、ただ一人を除いてはだが。
このとき俺は気づいてなかったけど、もうお前は考え始めていたんだろ?
誰も傷つかないように、自分一人でしょいこんで。
そんな優しさを持ったお前が考え始めたものが。