上田と話しながら歩いていると、直ぐに指定されていた席についた。
「ではお嬢様、ここからは私は一緒におれませんが…どうかご無理をなさらないように。」
「…えぇ、ありがとう。」
私の父さんへの気持ちを知っている上田は、とても気がかりそうにその場を離れていく。
そして、それと同時に足音が私に近づいてきた。
「麻椿、待たせてすまない。」
声をした方にゆっくりと身体を向き直すと、久しぶりに見る父さんの姿があった。
「いえ、私も今来た所です。」
高い身長に整えられた黒い髪、スーツがよくあうスラリとしたスタイルに綺麗な顔立ち…何もかも完璧で、この人が本当に私の父親なのかと思えてくる。
それに、父さんを見ていると段々自分が嫌になってくる事も少なくはない。
無言の私に、父さんは笑いかけてきた。
「座りながら話そうか。」
「はい…そうですね。」
でも、今はその笑顔は私の中では不安でしかない。
これからが、私の苦痛な時間。