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「さようなら先生。」
そう言って田中は笑顔で帰って行った。
いや、あれは本当の笑顔ではないだろう…あの笑顔はあいつなりの強がりで作られたもの。
きっと、そうなんだと思う。
「俺も帰るかな。」
教室の戸締まりを確認し、俺は職員室へと向かった。
…そういえば、あいつドレス気に入ってくれるだろうか。
俺なりに似合うものを選んだつもりだけど…気に入られなかったらショックだよなー…。
職員室に向かう途中、教室の鍵をポケットに入れようと手を突っ込むと、何かが触れるのを感じた。
あ!!!
今日のために用意した田中のヘアピン!!
しまった…渡すの忘れてた。
ポケットの中で光るヘアピンを眺めていると、少しだけ残念な気持ちになるのが解る。
きっと、このヘアピン田中に似合うんだろうな……。