「お嬢様、そろそろ出発のお時間ですが…。」
「えぇ、ありがと。」
今日のために用意したコートを羽織り席を立つ。
「ごめんね上田。退職したあなたに無理言って…」
「いえ、私もこの数日楽しい時間でしたよ。」
先生がいない数日、どうしても他の執事を頼むのは嫌だった。
何か新しい人にお世話されるって事が我慢できなくて。
でも、そんな我が儘も今日で終わり。
明日からはアメリカで、一から人間関係を作っていかなきゃならない。
学校も、家でも。
「では行きましょうか。」
「ええ…」
上田が運転する車で、私達は父さんと合流する空港へと向かった。