持っていたハンカチを紅茶用のお湯で少し湿らしてから、ゆっくりと田中の涙のあとを拭く。
起こさないようにきをつけながら、そっと。
「ん……。」
でも、たった少しの衝撃で田中は起きてしまった。
「だれ…?」
まだ寝ぼけている田中は、俺を認識できていないのか眉をしかめる。
「おはようございます、お嬢様。」
本当は自分の存在に気づかれたくないのだけど、このままバレないと言うのも無理な話し。
諦めて姿を消すことなく、田中の目を見て挨拶をした。
「…………。」
「あれ?聞こえませんでしたか?
おはようございます、お嬢様。」
驚いて声が出ないと言わんばかりの田中に挨拶をもう一回。