カチャ
「どうぞ。」
いれられた紅茶からとても良い匂いがする。
この香りは…。
「アップルティーでございます。」
「アップルティー…。」
これまた懐かしいな。
最近はストレートが多かったし。
「そういえば、初めてお飲みになったのもアップルティーでしたね。」
「えっ、そうなの!?」
「はい、そうですよ。」
アップルティーが特別好きな訳じゃないんだけど……そうだったんだ。
何か、上田に少し敗北感。
「あなたは私より私の事を知ってるのね。」
「それはそうでございます。
なんといっても、あなた様がお産まれになってからずっとお仕えしてきたのですから。」
「…………。」
お仕えしてきたか…。
その言葉は今の私には少し残酷かもしれない。
いつか先生にもそう言われる日が来るんだと思うと、胸が締め付けられるようになるんだ。