「…別に何も…。」
何もあったわけじゃない。
ただ、私のなかで何かが引っかかって戸惑っているだけ。
そして、先生の顔もみれないだろうと家にも帰れないでいる。
ただそれだけなんだ…。
「何もないよ。景色見たかっただけだし…。」
上谷に向けていた視線を、もう一度窓の外に向けると夕日が眩しかった。
「でたな…麻椿の強がり。」
「…強がってなんかないよ。」
「いーや、俺からしたら麻椿のそういう所は強がってるんだよ。」
「!!!!…だからちがっ…」
「…麻椿?」
勢いにまかせて視線を上谷の方に向き直す。
すると、そこには予想外の光景が私の目に映ってきた。