ごめんね、小さく心の奥底で呟く
家族のためなんて言って
私はシュウの相手という一番やってはいけないことをやろうとしてる
でも、お母さんのその言葉は正直に嬉しい
だから私はゆっくり頷いた
と、同時にお母さんははっとした顔をした
「あ…そうそう!」
慌ててポケットに手を突っ込むと
中から白い封筒を取り出した
「はい、これ。あげる」
それは、何かのチケットみたいだった
「ふたりで行ってきなさい」
シュウくんとね?
と言うお母さんに、チケットを取る手が躊躇してしまう
「え、でも……」
「職場の人からもらったんだけどこの日はどうしても行けないから」
行っておいでというお母さん
でも、今までふたりで出かけたことなんてないのに
シュウは行ってくれないんじゃ…
私がそれを受け取るのを渋っていると
無理矢理手ひらににそれを置かれて
はっと顔を上げた
「ちょっと……っ!」
慌てる私をよそに、
手を添えて柔らかく笑うお母さん
「たまにはいいじゃない」
私はチケットを握りしめたまま眉を下げるしかなかった