この感情は妹として…?
それともクラスメイトとして…?
たぶん、それは
「リサ」
どちらも違う気がした…
「さっきは…悪かった、」
「っ……」
「無理やりキスしたから」
シュウが謝るのなんてはじめてかもしれない…
私はまた目頭が熱くなるのを感じた
ゆっくりと左右に首を振る
この感情を持ったらだめなのに
抑えられないよ…
大嫌いと言われた
なのに、自分を大切にしろと言う
悪かったって謝ってくれる
冷たいなんて嘘、
優しすぎるよ、シュウ…
どうしよう…
私の中にいつの間にか
いけない感情が生まれてしまった
私はシュウのことが…
「………す、き…」
部屋でひとり呟いた
手に持っていたチケットを見つめながら…
「どう、しよう……」
今まで、好きな人がいたことはあった
片思いして友達に相談したり
それでも、うまくいかなかったり、
恋したことはある
でも、こんなに切なくて苦しいものだった…?
シュウは一番結ばれないひと
結ばれちゃいけないひと
私はチケットを財布の中にしまった
無くさないように、大切に…
朝、いつもより早めに起きた私は
膝丈のワンピースを着て洗面台の前にいた
今日は遊園地に行く日…
普通は兄妹ふたり遊びになんて
行かないものかもしれない
軽くお洒落をしたりして、変かな…
でも、今日だけはいいよね
いつもとは違う、ふたりだけで出かける
私はどきどきしながらも玄関へと向かった
家を出ると、もう先にシュウは家の前にいて
両手をポケットに突っ込んだまま待っている
私が出てくるとシュウはこっちに視線を向けた
「……じゃあ、行くか」
「う、うん…!」
それだけ言うと、シュウはさっさと私の前を歩く
私は置いて行かれないように早足でついて行った…
しばらくすると目的地である遊園地に着いた
休日だからか、見渡す限り人ばかり
それでも少しだけ早い足取りのシュウに
私は後ろからついて行く
でも…
「あ………っ」
急いで歩いていたら人にぶつかってしまった
相手の人は何も言わずに行ってしまい、私は軽くこけてしまう
恥ずかしい…
両手を地面についたまま立ち上がろうとすると
軽く腕に手がまわっていて、シュウが私を支えてくれていた
「何してんの…」
「えっと、ぶつかっちゃって…」
ぶつぶつと小さな声で呟くと
ひとつ、息を吐くシュウ
すると軽く手を握られた
驚いてシュウの横顔を見つめると
きゅっと力を入れて
また歩きだした
手を引かれて、
それだけで、心臓が高鳴る
「足、速かったら言って?」
「え……」
「俺について来てたから、転けたんだろ?」
「っ……ち、違うよ…!」
シュウのせいじゃない…
私は否定して、首を横に振る
でも、
「嘘つくの下手すぎるから」
ふっと笑って、
さっきよりもゆっくりと歩いてくれた
私の歩幅に合わせてくれる…
ぶっきらぼうな言い方なのに
そのちょっとした行動が優しくて、
じんと胸が熱くなる…
繋がれた手が暖かく感じた
いつもは距離を感じるのに
今日は少しだけシュウの心が近い
私はシュウに手を引かれながら周りを見渡した
親子連れやカップルが楽しそうにしているのが見える
あの人たちから見たら
私たちってどう見えるのかな…
「どこ行く?」
その声にはっとすると
いくつかのアトラクションの前に着いていた
「じゃあ……あ、あれ乗りたい!」
「分かった、行こう」
人気のある乗り物にいくつか乗って
私はこの時間を楽しんだ
シュウは私の乗りたいものを優先してくれて
それも、また嬉しい…
「はい、これシュウの分」
「……あぁ」
近くのベンチで休憩
私はホットドッグをシュウに渡した
シュウはあまりこういところが好きじゃないんだろうな…
ジェットコースターも誘ったけど
嫌だと言われて乗れなかったし、
コーヒーカップとかメリーゴーランドとか
他にも乗りたいものはあるけど
それはさすがに言えなかった
だって、あれは恋人たちに相応しい乗り物のような気がしたから
私とシュウはそんな関係じゃない
黙ったままホットドッグを口に運んでいると
シュウが私の飲み物を奪った
「あ……」
そのままひとくち飲むと
私にそれを返す
「オレンジジュースかよ、甘いな」
「な、なら……飲まなきゃいいのに…」
そっぽ向きながら缶を握りしめる
か、間接キスだよ…
今更こんなことって思うかもしれないけど
たったそれだけで意識してしまう
缶に視線を落としていると
近くを人が通っていくのが分かった
シュウは私から見ても本当にかっこいいと思う
私服はいつも見てるけど、
こうやってふたりで外に出かけることなんてないから
妙にドキドキしてしまう
すれ違う女の子がこっちをちらりと見ていく
シュウのことを見てるんだ…
私も缶から視線を外してシュウの横顔を見つめると
不意にシュウと目が合った
「なに?」
「えと…なにもないよ」
私はまたシュウから顔をそらした
真っ赤になってる顔を見られたくなかったから…